Thursday, June 18, 2015

空中のハトと地上のハト

空中で群れているハトと地上で群れているハトの違い。
空中のハトは集団的で、地上のハトは個人的。

空を舞うハトの群れは協調的に見える。
群れは同じ方向を目指して飛ぶ。直線的ということではなく、ときには直線的に一方向を目指し、ときには渦を巻いて飛ぶ。全体として協調的で、見た目に美しい形状をなして飛翔する。
地上から舞い上がった瞬間も同様で、同じ方向を目指して舞い上がり、協調的な舞いを見せて、どこかへ集団で去って行ったり、いっせいに地上に舞いもどったりする。

地上で群れているハトは、「群れている」という点では集団的だが、個々には勝手に動いている。
少数の群れを見ているとそのことがかえってよくわかる。それぞれ勝手に動いていた個体どうしが、ときに並行して歩くことがある。しかしそれは協調性の現れというより、身体の接触を避けるためにたまたま並行して歩いたとしか見えない。2羽のハトがしばし寄り添うことがあっても、すぐに離れて別々の方向へ歩いてゆく。
空中にあるときのような協調性は地上では見られない。地上では群れがそろって一方向に進むとか、渦状をなすとかはない。

地上のハトの個人性は舞い上がった瞬間に崩れ、群れは集団的行動に移る。
この移行について「集団的意思」といったものを想定する必要はない。まず1羽が飛び上がり、他の個体がつぎつぎにこれを模倣する結果、全体の動きが集団的になると考えられる。これについては「模倣で生まれる群れの集合知」を参照。